マンション管理士とビル管理士は同じ建築物管理に関する資格ですが、求められる知識や活躍できる業界が異なります。
どちらの資格も高い難易度の試験に合格して取得できる資格であり、500~1000時間程度の学習時間が必要です。
このことから、どちらから先に取得したほうがよいのか、同時取得が可能なのか、志望する業界・就職先に合わせて、事前に検討したうえで対策する必要があります。
また、業界未経験者であればマンション管理士を取得しながら、建築物の管理に関する実務経験も併せて必要となってくるでしょう。
本記事では、上記の疑問について業務内容と試験内容の面からくわしく解説します。
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マンション管理士とは
マンション管理士は、マンションやアパートなど、集合住宅の管理に関する専門家です。
不動産管理会社、マンション管理会社、または管理組合などへの就職が考えられます。
主な業務内容は以下のとおりです。
- マンションの管理組合・所有者へのサポート
- 保健所による立ち入り検査の対応
- 長期修繕計画や管理規約の策定・見直し
- 集合住宅で発生するトラブルへの対応
ビル管理士とは
ビル管理士の正式名称は、建築物環境衛生管理技術者です。
集合住宅を取り扱うマンション管理士とは対象物件が異なり、オフィスビルや商業施設、ホテルなどを対象とした維持管理業務を行います。
特定建築物(面積が3000平方メートル以上の施設)にはビル管理士の設置義務があります。ビル管理会社や不動産管理会社、建築会社、建設会社、総合ビルメンテナンス会社、または公共施設などの施設管理部門など、幅広い分野の企業で求められているおり、就職先も多様です。
主な業務内容は以下のとおりです。
- 建物の運営・管理、セキュリティ管理、清掃、保守・修繕などの業務
- 保健所による立ち入り検査の対応
マンション管理士とビル管理士試験の共通点と違いは?
マンション管理士・ビル管理士の試験概要です。
マンション管理士 | ビル管理士 | |
資格種類 | 国家資格 | 国家資格 |
受験資格 | なし | あり (一定の建築物における環境衛生上の維持管理に関する実務に業として2年以上従事) |
設置義務 | なし | あり |
試験日 | 年1回(11月の最終週の日曜日) | 年1回(10月の第一日曜日) |
試験時間 | 2時間 | 午前3時間、午後3時間 |
出題形式 | 四肢択一式・50問 | 五肢択一式・180問 |
大きな違いとしては、受験資格と設置義務の有無です。
まず受験資格については、マンション管理士には必要となる要件がないのに対し、ビル管理士は一定の実務経験を要します。
また、設置義務についてはマンション管理士にはありませんが、ビル管理士は設置を義務付けられています。
マンション管理士とビル管理士の試験の難易度と合格率は?
マンション管理士の合格率は毎年7~9%前後で推移しています。
合格最低点の得点率は例年7〜8割ですので、8割以上の得点を目指すとよいでしょう。
以下は令和4年度マンション管理士試験の結果についてです。
受験申込者数 | 14,342 名 |
受験者数 | 12,209 名 |
受験率 | 85.1 % |
合格者数 | 1,402 名 |
合格率 | 11.5 % |
合格最低点 | 50点中40点以上 |
一方で、ビル管理士の合格率は例年10〜20%です。
ビル管理士の合否判定基準については、総合得点だけでなく、全科目に対して基準点が設定されています。
以下は令和4年度ビル管理士試験の結果です。
受験申込者数 | – |
受験者数 | 9,413 名 |
受験率 | – |
合格者数 | 1,681名 |
合格率 | 17.9% |
合否判定基準 | 各科目40%以上 総合得点65%以上 |
マンション管理士とビル管理士の試験内容は?
マンション管理士とビル管理士の試験内容を比較すると、以下のとおりです。
試験内容 | 法令系の出題 約20問 会計・管理実務の出題 約5問 設備系の出題 約12~15問 マンション管理適正化法の出題 約5問 ※出題数は毎年変動する。 | 建築物衛生行政概論 20点 建築物の構造概論 15点 建築物の環境衛生 25点 空気環境の調整 45点 給水及び排水の管理 35点 清掃 25点 ねずみ、昆虫等の防除 15点 |
マンション管理士とビル管理士は共通の知識を活かせる部分もありますが、管理対象物件の種類や業務の内容の違いがあることから、出題内容も大きく異なるのが特徴です。
マンション管理士は法令系、会計管理実務系、設備系と出題分野があるなかで、法令関係に大きく配点のウエイトが置かれています。
一方、ビル管理士はより実務的・技術的な分野に配点のウエイトが置かれています。
マンション管理士とビル管理士の学習時間は?
マンション管理士合格に必要な学習時間は500時間程度です。
1日3時間を試験勉強に費やす場合、6か月弱かかる計算になります。
ビル管理士合格に必要な学習時間は1000時間程度です。1日3時間を試験勉強に費やす場合、10か月以上かかる計算になります。
合格率はマンション管理士の方が低いですが、学習時間の目安はビル管理士のほうがより多く必要です。
ビル管理士には受験資格として実務経験が求められることから、受験者のレベルも相対的に高いためだと考えられます。
マンション管理士とビル管理士のダブルライセンスのメリットは?
マンション管理士、ビル管理士の両方を取得した場合、建築物管理のプロとして認められるでしょう。
ダブルライセンスの具体的なメリットは次の通りです。
まず、マンション管理士、ビル管理士の資格の両方を保有している場合、商業施設、集合住宅問わず、管理を任せられる人材となります。
二つの資格の対象物件が異なることからも、就職や転職における業界選択の幅が広がります。
また、二つの資格試験の学習を通じて、建築物の管理に関する幅広い知識を得ることが可能です。
さらに、既に事業会社に所属している場合は資格手当などによって収入が上がる可能性があります。
マンション管理士とビル管理士、両方取得するならどちらを先に受験するのがよい?
マンション管理士とビル管理士は同じ建築物の管理でも異なる性質の物件を取り扱うことから、自身の目指したい業界を基準に受験する資格を選択するのがよいでしょう。
未経験者がダブルライセンスを目指す場合は、学習時間が少なく、実務経験を問われないマンション管理士からとりかかるのがおすすめです。
ビル管理士を取得するためには学習時間をより多く確保す必要があり、実務経験も問われることから、受験のハードルは相対的に高くなります。
ただし、すでに実務経験があり、法令系より実務的、技術的な知識をもっている場合はビル管理士のほうが取得しやすい場合もあります。
マンション管理士とビル管理士の同時受験は可能?
例年、マンション管理士の試験日は11月の最終週の日曜日、ビル管理士の試験日は10月の第一日曜日ですので、同時に受験すること自体は可能です。
出題範囲については、マンション管理士は法令に関する出題のウエイトが高く、ビル管理士は法令に関するより実務的・技術的な出題のウエイトが高くなっています。
マンション管理士とビル管理士では、共通している部分はそれほど多くありません。
以上のことから、同時受験自体は可能ですが、メリットは大きくないといえます。
それぞれの資格で500時間〜10000時間の学習時間を要することから、一つずつ着実に取得を目指すほうが現実的です。
ただし、学習時間を長期で十分に確保できるのであれば不可能ではないでしょう。
まとめ
マンション管理士とビル管理士の同時取得は可能です。
しかし、いずれの試験も500〜1000時間という膨大な学習時間が必要となるため、同時取得を目指すよりも、目標とする業界や就職先かから着実に一つずつ資格取得を目指すほうがよいと考えられます。
マンション管理士は法令に関する問題、ビル管理士は実務的、技術的な問題に配点のウエイトが置かれています。
業界未経験者が取得を目指す場合は、実務経験を求められず、学習時間が相対的に少なくて済むマンション管理士から目指すのがおすすめです。
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